書籍『マインドフル・セルフ・コンパッション プラクティスガイド -セルフ・コンパッションを教えたい専門家のために-』(2022年11月出版)
この度、『マインドフル・セルフ・コンパッション プラクティスガイド』を星和書店より出させて頂きました。富山在住の臨床心理士・公認心理師の山藤奈穂子さんと一緒に訳させて頂きました。大好評MSCワークブックと対をなす書籍です。原著 ”Teaching the Mindful Self-Compassion Program: A Guide for Professionals” (Guilford, 2019)刊行から3年かかりましたが、無事にここまでこぎ着けられたことに心から安堵しています。MSC8週コースの説明を中心に、セルフ・コンパッションを教えることについて詳しく書かれています。臨床でコンパッションを使いたい方はもちろん、日々プラクティスをされている方にとってもとても役に立つものと思います。
セルフ・コンパッションのプラクティスが難しいという声はよく耳にします。確かに一 瞬、自分でできたように思えても、日常的には簡単ではありません。というより、プラク ティスは無理かもしれません(苦笑)。そういう人がいらっしゃったら、試しにこんなふ うに考えてみてください。“そんなふうに感じる自分をどう感じるでしょうか?”・・・「あ あ、ダメだ、ムリだ、ヤーメタ!」(笑)・・・これ、言わずもがな自己批判ですね。まずは 自己批判があることに気づいてみましょうか。「そんなのイヤだムリだダメだアホだ・・・」・・・あれあれ、自己批判の悪循環。でもそうですよね、コンパッションのプラクティスって大変です。(まあ・・・これって一種の抵抗です。詳しくはMSCワークブックをご参照ください(笑)。)
ここでお馴染みの「あなたの大切なお友だちがこういう状況だったら、あなたはどう声 をかけますか?」クエスチョンです。恐らくみなさん、「それ、難しいよね、大変だよね」 と大切なお友だちには寄り添って声をかけるでしょう。でも自分にこうかけることは難しいものです。これこそ、まさにセルフ・コンパッションの難しさです。
今、世界は非常に難しいことが多く起きています。難しいことが起きるとその事態の責任がよく問われますが、物事なんでも一筋縄ではいきません。「そうか、世の中、簡単じゃないんだ」と感じます。世の中がこれだけ難しいのですから、セルフ・コンパッションのプラクティスは自分にとって簡単なはずはないのです。
私は大学の授業で、「難しいと思えただけで十分だよ。それがわかっただけで今日の意 味はあるよ」と伝えることがよくあります。コンパッションはまさにそういうものかもしれません。物事のやれコツだと秘訣だのと、物事がうまくいくことを「前提」にしていることはこの世に本当に多いものです。でも果たしてそうでしょうか? 世の中、もともとうまくはいかないものです。セルフ・コンパッションのプラクティス自体もそう考えられると、少し構え方が違ってはきませんか?
もし自己批判があることが許せないという方がいたら、まずこの「プラクティスの難しさ」に気づいてみてはいかがでしょうか? もともと難しいことをやっているのです。難しいことを難しいと感じてもいいのではないでしょうか? そこに気づいただけでも、まさに素晴らしいプラクティスです。もしかすると身体感覚の変化などもあるかもしれません。
私たちは実は “価値判断せずに(まさにマインドフルに)気づいて”います。でもその気づきを言葉にしすぎたり、強く感じすぎたり、自分でつぶしたりして、かえって困難にしています。ふと気づいて、それをただ穏やかに受けとめてみると、少し変わるかもしれません。いや、そんなに変わらなくてもいいんです。そう、まさにそれがマインドフルでコンパッション豊かな姿勢なのですから・・・
(監訳者:富田 拓郎)
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