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セルフ・コンパッション(自分に対する思いやり)とは

セルフ・コンパッションとは、自分が最も必要としているときに自分のよき友になること、つまり、自分の敵ではなく味方になる心のありかたです。

 

私たちの文化においては、他者に対して優しく接することが重んじられています。しかし、自分のこととなるとどうでしょう?友だちが失敗したときには「ミスは誰にでもあるよ。次に頑張ればいいよ」などの言葉をかけることができるのに、いざ自分が失敗してしまうと「なんて馬鹿なんだ!」などと自分を否定するようなことを自分にかけてはいないでしょうか?

​多くの人が他者には優しく接することができても自分に優しくすることが難しいと感じていることは、科学的な調査でも明らかになっています。しかし、自分に対して思いやりをもつことは、他者に対して思いやりをもつこととと変わらないのです。ここで、他者、あるいは自分に対する思いやりについて考えてみましょう。

まず、他者に対する思いやりをもつためには、その人が苦しんでいることに気づく必要があります。路上生活を送る方に気をとめることがなければ、その人の人生がどれほど困難なものであったかに思いを馳せることはできません。そして、他者の苦しみに気づくことができると、その苦しみにあなたの心が動かされます。他者の苦しみを通じて自分の心が反応するのです。英語の ”compassion”という言葉は「共に苦しむ」という意味であり、日本語の「思いやり」には「他人の身の上や心情に心を配ること」という意味があります。他者の苦しみにあなたの心が反応すると、他者に対して温かさや思いやりを感じ、何らかの形で苦しんでいる人の助けになりたいと思うでしょう。

 

思いやりをもつということは、他者が目標を達成できなかったり、失敗したりしたときに、相手を厳しく裁くのではなく、理解と優しさを与えるということでもあります。つまり、あなたが他者の苦しみや困難に目を向け、他者に対して温かさや思いやりを感じるとき、他者の経験と同様に、自分の苦しみや困難に対してもあたたかさや思いやりを向ける可能性が生まれるのです。他者に向ける思いを自分に向けてはいけない理由があるでしょうか?言い換えれば、あなた自身の苦しみや困難(例えば、失敗、不完全さなど)も、人間であれば誰もが経験することの一部だと理解できたとき、他者にも自分自身にも真の思いやりを持つことが可能になるのです。

セルフ・コンパッションとは、辛いとき、失敗したとき、自分の気に入らない部分がクローズアップされたときなどに、大切な友人に対するのと同じように自分をサポートし、理解すること、言い換えれば、自身の個人的な困難に直面した際に、自分のさまざまな不完全さや欠点を容赦なく裁いたり批判したりするのではなく、自分に対していたわりの気持ちと理解を示すことです。失敗して傷ついている自分を無理やり奮い立たせたり、痛みに注意を向けないようにしたりするのではなく、「いま、自分は困難な状況にある。自分を落ち着かせて、ケアするためにはなにができるだろう?」と自分に語りかけてみましょう。人間である限り、欠点のない人などいませんし、失敗しない人もいません。誰が、あなたが完璧でなければならないと言ったのでしょうか?

セルフ・コンパッションを学び実践する過程で、より健康的で幸せになれるような方向に変わろうとする自分に気づくかもしれません。これは、現状のあなたが無価値だったり、ありのままの自分を受け入れられないからではなく、自分自身のことを大切に思い始めたから。自分に対して思いやりを持つことは、自分自身の人間性を尊重し、受け入れることといえます。それ以上に大切なことがあるでしょうか?

ものごとは、かならずしもあなたが望むように進むとは限りません。イライラしたり、ミスをしたり、損失を出したり、窮地に立たされたり、あるいは、考えにそぐわない出来事もあるでしょう。しかし、それが人生であり、私たち皆が共有する現実なのです。あなたが現実との闘いをやめ、ありのままの人生に心を開いていくほど、自分自身やすべての仲間に対して思いやりを感じることができるようになるでしょう。​

以下のウェブサイトから引用・翻訳

・Center for Mindful Self-Compassion  What is Self-Compassion?

   https://centerformsc.org/learn-msc/

・マインドフルネス・セルフ・コンパッション・ワークブック (星和書店)

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